岩城 久治
薔薇考
薔薇の朝いぶかしければ再加圧
薔薇赤し黒き画面におのが貌
熱(ほめ)きをり指頭に薔薇の刺疼き
薔薇花弁散らしめよヘビーメタロツク
家(いえ)風や薔薇にしをれば蛻(もぬけ)詫ぶ
京 事(3)
嵯峨大念仏その後さてもさても
火柱が伸び涅槃会の嵯峨の夜
燃え倒れ来たる一柱涅槃の夜
聞こし召せ仏の別れのこの火勢
生類の顔様尽(つく)し涅槃変
清水 貴久彦
腰 痛
黒文字で草餅つつく鼠志野
土踏まずくすぐられては踏む潮干
笑はせてすぐ座を退けり夏隣
母の日の母豆乳の味試す
走り梅雨左腰痛右歯痛
プリズム(一)
地球儀を共に回せし君朧
賜りし命軽しや聖五月
反逆の是非鶴に問ふまづ一誌
野ざらしや回向の僧に夕立風
鞭打つて勝ち得たる日の海月かな
すずき みのる
清滝
トンネルは歌つて通る青葉冷え
新緑の山中にゐて透きとほり
水底に石の諸々五月来る
皐月なる日の斑の道は水の道
渓谷や輪唱をなす河鹿笛
緑さす岩の一つが芭蕉句碑
滴りや杉山をこそ神殿と
空也滝膚(はだへ)に粟を立てつつも
石楠花の万花すなはち一華なす
ゴールデンウイーク終日を飛行船