みのる俳句集1
大寒の南拓(ひら)けて京の町
蓑虫を数年見ざる青き空
厳寒の甍(いらか)の一部となりて鳩
風鐸(ふうたく)を首と吊して凍て厳し
水中に枯れ切る蓮の千の茎
冬麗(とうれい)や駅屋上のヘリポート
春浅き朱塗りの門に花天井
梅林に青きホースの長々と
千体に余る一体あたたかし
朧夜の誰かに尾行されさうな
菜の花を壺に咲かせて京都駅
春霞(はるがすみ)西と東に本願寺
末黒(すぐろ)の薄昔お歯黒婆の家
李(り)氏の墓朴(ぼく)家の墓や竹の秋
路地奥に鐘楼見えて沈丁花(じんちょうげ)
光源はいづこ古雛の面
涅槃図(ねはんず)に人の顔して泣ける象
涅槃図に左右より雲棚引きて
涅槃図に顔赤きもの青きもの
悲しむは言祝(ことほ)ぐに似て涅槃の図
花御堂昏(こん)の空より雨少し
花祭昔牛馬の通ひ道
遠景にエナメル引の春の川
雷神の三指が掴(つか)む春の闇
細殿(ほそどの)に春の落ち葉の留まりて