みのる俳句集 10
清滝
トンネルは歌つて通る青葉冷え
新緑の山中にゐて透きとほり
水底に石の諸々五月来る
皐月なる日の斑の道は水の道
渓谷や輪唱をなす河鹿笛
緑さす岩の一つが芭蕉句碑
滴りや杉山をこそ神殿と
空也滝膚(はだへ)に粟を立てつつも
石楠花の万花すなはち一華なす
ゴールデンウイーク終日を飛行船
音楽
虎杖やさすがはヴォイストレーナー
低音より弾く開放弦水中花
冷房の真中グランドピアノかな
一斉に口開け朱夏の合唱団
指揮者今饗宴にゐて汗しとど
チューバ奏者丸ごとの夏抱え込み
夜の秋母の部屋よりハーモニカ
夏果てやピッコロ走る走る走る
ティンパニの調音頬に爽気触れ
少年にセロ十月の音楽室