みのる俳句集 11

 車 窓

ビルに腹見せジャンボ機や十二月
海底の丸みが山に暖房車
鹿垣の枯れを囲ひてゐたりけり
スカートの下にトレパン雪の駅
雪増やしつつ沿線の町々は

雪塊を車底に特急進発す
雪煙の渦トンネルの入り口は
車掌来る左右の車窓に深雪谷
雪嶺や宙に断ち切れ高架道
雪の畑一所水気の色見えて

 紫 煙

自転車の轍のさまに薄氷
なごり雪なり信号は赤と青
春愁一灯ともる巨大ビル
涅槃図に釈迦嘆かざる御一人
片方の穴から紫煙万愚節

 引 用

子子子子子子(ねこのこのこねこ)てふ戯言このこ食ぶ
なごり雪日の照りながらと口遊み
つちふるや虚実皮膜の虚の側に
春は曙ケトルの笛の鳴りそむる
亀鳴けるなり言葉言葉言葉とぞ