みのる俳句集 12
煤逃げの日本海まで来てゐたる
海猫百羽そつぽむかれてをりにけり
テトラポットを吐き続け冬の海
引く波を呑み込み冬の波寄する
冬波の引く時音の無くて引く
タイヤ痕消し浜癒す冬の波
冬麗や石碑に水の斑が動き
墓裏へ廻りて冬の草を抜く
雪嶺を源とせず町の川
道路作りて冬枯れを増やしをり
産土の森の小さな夕焚火
大根干す棚は藤棚かと思ふ
廃屋と見れば大根干してあり
家に帰りて聖夜劇アンコール
病む犬に添い寝してゐる聖夜かな
冬日影沖行く船を光らせて
鮟鱇の口より雑魚の流れ出す
塩鮭の尾のはみ出せる菜屑入れ
歳晩の日差しを入れて仏間かな
湯を抜きし湯槽あたたか年の暮
風呂の湯を闇に流して去年今年
淑気満つ砂丘に着けし足跡も
生き死にの狭間に冬の海凪て
お岩さまとて岩祭る初詣
初夢をすでに忘れてゐたりける