みのる俳句集 19
教室は薫風を吸ひ吐き出しぬ
黒揚羽高張提灯並ぶ町
不土踏しつかり見えて三尺寝
夏草に躓いてゐる一輪車
袋より縞透けて見え蛇の衣
あかんべの舌にのせたる俵茱萸
夜の秋オンザロツクに水の膜
地に伸ばし置く鹿垣のトタン板
グランドは一際の闇秋の風
秋の声シカタガナイと子規の母
往還は幽谷の底星月夜
落ち葉色々ここに見えざる木のものも
燃え立つと零れ落つると公孫樹黄葉
風渡り来る菱の実を取りをれば
紙を切る秋の日影をもろともに
幽冥の風吹き寄こす滑子かな