みのる俳句集3

秋蒔の種復刊の書に零れ
花茗荷京の町家の坪庭の
秋風のステージ巨大スピーカー
秋麗やカリオン山が返しをり
薄百態引き寄せて振り放し

抱卵の気の蘂にあり曼珠沙華
稜線は木々のでこぼこ後の月
繰り返し志ん生を聴く豊の秋
幽冥の風吹き寄こす滑子かな
銀漢の中に病みゐる星もあらん

秋韻や夜の病舎なる白便器
星月夜車馬ではたどりつけぬ場所
黎明の出雲平野に冬の月
対岸に点綴の灯や鴨の陣
冬日和シーツは背筋伸ばすさま

暖房や百足めきたる手術痕
丸め置く体の温みの掻巻を
大路小路は灯の間(あはひ)鉢叩
眠り来るまで霜月の黒き窓
主峰より離れて雪の一山が

数日を経たる姿の掛大根
吹きすさぶ枯野の果てに幾波頭
枯山が枯山を立ち塞ぐかな
松林より極月の町と海
料峭の海よりの雨横倒し