みのる俳句集5
翼閃々ゆりかもめまた帰る鳥
うつすらと種々を載せ春の野は
白き糞運ぶ奔流猟期果つ
内湾を隔て残雪指呼の間
竹幹の粉吹き中有より初音
最終戦争果てたる後の桜かな
人形を現ずる煙春の山
苗木植う鳥部野に日の射しをれば
切り株の内より腐る日永かな
春燈が照らす楽聖デスマスク
春日遅々レコード針の跳ぶ音も
漣は光の走路修司の忌
春惜しむ瞳に星の漫画はも
黒猫の背の曲線夏兆す
木の虚に何神棲まふ五月闇
壮の手のひとつかみほど余り苗
楽の音やひなげし永遠に皿回し
新緑の凹むところが大文字
一刀に音弾けたり竹伐会
七月の駅舎鉄腕アトムの絵
淡海もさみどりとなる喜雨休
液晶テレビに珊瑚礁冷奴
雲母虫健啖にして一主宰
手を取りて大路小路を鉾祭
開場を南座に待つ処暑の昼
秋袷夕日の映ゆる虫小窓