さきがけて銀行ロビーの雛展 尼御所の耐火耐震さへづれり 芽柳や高架のひびく廓口 漆黒の猫の見てゐる春田打 石置いて踏んで瀬渡る山桜 ウオークマンきく子もをりぬ花筵 ゆきずりに野外ジャズきく花吹雪 花疲れするにはいまだ猿ヶ辻 咲き誇る薄墨桜雨ながら 川舟へ仕出し運べる花の昼 蝌蚪に足出でて鳳凰堂くづる 蔵茶房出でてまぶしき麦の秋 二階より二階へ会釈リラの風 レストランに揚羽舞ひ込む牧の昼 竹とんぼ風にのつたる麦日和 医通ひに近径ありし半夏生 雷はげし籠りゐてなほ逃げごこち 雨音の立夏や午前零時なる 旅好きは母ゆづりかも吹流し 駐車場に川舟あげて梅雨出水 散布剤かけし繁りの夜を匂ひ 昼顔や水路終着櫂しづく みどりさす漱石の間や湯屋二階 昼間より浴衣に替へて道後の湯 夕薄暑からくり時計の鉾まはる 遊び子を待つのみにゐて浜日傘 水平線ゆらりとしたり浮輪の子 部屋ごとに岳の名うれし避暑の宿 駅前のKOBANの文字避暑期去る 夏萩やねねの道てふ石畳 |