『参』「参燦」集より 1

『参』には佳品集としての「参燦」集があります。今回はそこからの作品を紹介してみたいと思います。
 
着重ねて夕日のナイル帆走す    吉村千津子 追剥の追善塔婆風花す       川勝 好女
先に寝し夫に来やうぞ雪女     神原 広子 犬小屋に少しもたれて雪だるま   曽根 はる
入院す鴨来し池を見てののち    辻 滋子 厠へと母の雪掻く暁けの音     林美智子
急停車して雪落すトラック便    伊藤晶子 老僧の掌に絆創膏冬座敷      片岡寿美子
酒粕を焼けば幼き日の家居     佐々木志う 冬ざれやパン屋はパンを売りつくす 佐名木京子
ストーブに犬もよりきて小家族   谷村 綾子 二つ切四つ切冬至かぼちや売り   人見 洋子
煤逃げの夫の行く先推測す     平井 泰子 斉米や寺の焚火のゆたかなる    森 初代 
病む松も塔も吹雪の法隆寺     和田真利子 犬の椀の底もて叩く厚氷      松浦 恵子