『参』作品集より 10


 
機翼下の雲海に穴神の留守     神原 廣子 月待ちの池畔の風に髪おさへ    林 美智子
柚子の木の禁札揺らす虎落笛    矢田部美幸 力走のポスターに来しきりぎりす  森  初代
軒に吊る消化ポンプや柚子日和   奥村木久枝 月の宴昨日にありし繋ぎ舟     松田 うた
店閉づるうわさに釣瓶落しかな   渡辺 公子 亀石の瞼見てゐる案山子かな    辻  滋子
木犀や三叉路に来て迷ふとき    川端 久子 啄木鳥や居ちよる来ちよると出雲人 佐名木京子
運動会応援だけで終りけり     曽根 はる 炎上の塔のいしずゑ散紅葉     高山 邦夫
旅に聞くさんさしぐれや身に沁みて 辻  芳郎 ロケの舟道より下ろす蘆の花    寺嶋 艶子
評定の座へづかづかと菊師入る   西田志津子 池日和羽うちて鴨は群に入る    林 節代
早朝の発声練習丘の秋       林田 千代 高速路降りてたちまち盆地霧    平田 幸子
殿様の絵と伝はりて冬座敷     水野美代子 在原邑はや荒組の雪囲ひ      向井富美子
振り返る吉備路の塔や秋夕焼    山本 康夫 刈田中帽投げあひて駆けゆく子   安井  久
渓も奥機音のあり豆筵       山添 涼子 菜虫とる割箸土につきさせり    菅江 玲子
朝寒やうつろな我を犬のひく    小安 一子 襟首へ水白粉の冷たさよ      岡村 美江