『参』作品集より 14


 
頭のごとく蕪くるくる洗ひけり   奥川 正子 花活けて新築出窓初日さす     松浦 恵子
春着脱ぎ置かれしままの夕支度   宮川 一郎 年始状地震に崩るる街より来    吉行よし子
小春日を来し人に添ひ坐りけり   山本 清子 瑞雲に乗る鼠絵馬初詣       安井  久
上棟やクレーン車縮む年の暮れ   森  初代 神木の結ひくじ解きて年用意    湊  妙子
寒晴れのサービスエリア婚の荷も  平田 幸子 ふたたびの入院となる寒き朝    林田 千代
雪嶺に日矢射す朝の湖北道     林  敏子 豆を煮る湯気ほこほこと冬籠    西田志津子
寒靄の東寺の塔や旅果つる     辻  芳郎 雪の戸をあけて聖書をとかれをり  谷村 綾子
風邪に寝て国会質疑聴く日かな   田中 房子 物売りの故郷は倍と雪のこと    菅江 玲子
配られし白紙に淑気写経する    佐々木志う 初風呂やなお生きたしと思ひゐる  栗山 常子
大雪や撓る垂木に声かけて     奥村 和子 隧道を抜け地吹雪の高速路     岡崎 鶴子
紅白をうしろに聞きて年用意    伊藤 晶子 木枯らしの角を曲がれば珈琲店   生澤 漾子
風花や嬰のくつ下あげてやり    新井比佐子 向き合へる夫なきごとく毛糸編む  山本 康夫
手焙りにうなづくばかり母老いて  山添 涼子 狐顔したる祈祷師寒土用      松田 うた
カリヨンの曲は樅の木大枯野    林 美智子 うけこたへよくて鮟鱇買はさるる  林  節代