『参』作品集より 15


 
もぐさ屋に声かけらるる初大師   神原 廣子 滝守の練炭の灰捨てに来し     矢田部美幸
蹴上げたる鞠へ声してゆりかもめ  辻  滋子 しやつくりの児と相席のバスうらら 向井富美子
むしタオル愛馬きよめて卒業す   大屋 久子 神殿に忘れ傘あり追儺あと     奥村木久枝
警官の非番嬰抱く小春かな     奥村 文子 翼灯をひとつ引き寄せ冬星座    川勝 好女
舶来のシヤボンの匂ふ初風呂よ   佐名木京子 校長が凍道に待つ持久走      曽根 はる
鳩サブレー好きな家族や山笑ふ   高山 邦夫 聞き返すこと増えし母初電話    野村 映子
雪を来て雪忘じをりアンコール   林  節代 初がすみ島の架橋のすすむ音    林 美智子
股火して錦はづれの飾売      松田 うた はぐれ鴨ときに汽艇の水尾にのり  山添 涼子
日迎へのわけても二見が浦にかな  山本 康夫 初弘法金の成る木に人だかり    栗山 常子
法螺貝を吹きて淑気の行者講    奥村 和子 タクシーを待ちあぐねをり雪しまく 岡崎 鶴子
永き日やあれこれ修繕すべきあり  岡村 美江 白梅の下道しるく犬ひるむ     生澤 漾子