『参』作品集より 17


 
海光の急勾配や新茶摘む    高山邦夫 手をふれば臍出る童青葡萄   林 節代
朴の芽や薪割る山村留学生   向井富美子 恋鴨の流されて来る舟溜    矢田部美幸
このところ取材の多し日脚のぶ 大屋久子 新橋の歩道の広しつばめ飛ぶ  工藤睦子
亀鳴くや生命線をほめられて  佐藤昭子 ありありと狐の嫁入り春の夢  田中房子
スカーフに春風入れて同窓会  坂東愛子 春のバス後部座席に一集団   人見洋子
出荷用穴子逃れん動きして   水野美代子 日本橋発ちて一里の草餅屋   村田清子
初つばめ絹商ひの符丁合ひ   山添涼子 桜貝二つ拾ひし児を褒むる   渡辺真利子
花の京みたま車も通りけり   糸井光子 新校舎は城の構へや葦の角   大坪みさ越
耳鳴りの途切れ嬉しき畦を焼く 奥村和子 残り鴨流れの隅にひとつがひ  谷水久美子