『参』作品集より 18


 
出入りして鶏小屋の青簾    奥川正子 雨上がる田植見舞の魚提げ   小谷良枝
初河鹿女神は今も岩戸陰    川端久子 夏川も橋も小さし稚魚流る   塚田正子
挙手の声響く日盛り参観日   長尾典子 教科書に鬼の伝説みどり差す  西田志津子
緑さす鬼の館にわらべ歌    細井玲子 藷を挿す機場の灯りとどきゐて 堀千寿江
練供養用意の掛橋くぐりけり  吉村千津子 女生徒の下校の顔や燕来る   渡辺公子
お隣の板戸の軋む走梅雨    渡辺真利子 山吹のまぶしく蝶を見失ふ   浅田の婦代
万緑や棟上げの香の立ちのぼる 糸井光子 ミモザ咲く大教会は丘の上   岩田房江
囀や耳鼻科医院のアンテナに  梅木篤 燦然と夏潮のなか日本丸    工藤睦子
滝千丈直線落下目も眩む    沢田宗四郎 オルゴール名曲喫茶に夏兆す  田中志づ
パスポート再申請す立夏かな  田中房子 年々に新茶を贈る友有りき   谷口万亀代
薫風の道尋ねらる線路越し   塚越淳子 甚平鮫の雌雄睦まじ夏館    湊妙子