毛皮脱ぐ歌手の姿態を眩しめり 辻 芳郎 | おでん屋に越しの寒梅見いつけた 奥村木久枝 |
嚔してテレビ解答見のがしぬ 平田 幸子 | 露天湯の粗き囲ひや枯木星 林 節代 |
枯芦の髄まで透る湖日差 辻 滋子 | 休診の張紙濡らす里しぐれ 奥村 文子 |
雪催葭の切口みな斜め 神原 廣子 | 月出でて味噌仕込すむ冬の蔵 林田 千代 |
霜柱ふみて嘶く今年駒 川勝 好女 | 十二月八日ほつんとパンに臍 向井富美子 |
やはらかき色のはこべら摘んで来し 矢田部美幸 | 潮入りへ冬日曳き来ぬ番鴨 山上登美子 |
胸中を打ち明けて来し冬の虹 山添 涼子 | 雨けぶる沙羅の冬芽や小町塚 山本 康夫 |
色あせし護符をはなれず冬の蠅 糸井 光子 | 開戦日冬空よぎる飛行雲 伊藤 京子 |
木枯や建売の旗色褪せて 伊藤 晶子 | 青空に身を乗り出して柚子をもぐ 江頭ふみ子 |
短日やふたつ余せしメモの用 岡崎 鶴子 | 冬虹に歩み入りたき野をひとり 岡本 昌子 |
駅名はひら仮名書きや山眠る 大槻すえ乃 | 小春日や午後はアリアにくつろげり 岡 喜美子 |