『参』作品集より


 
夫の好む輸入桜桃色わるき     伊藤 京子 オペラ座を標に宿へ薄暑ゆく    山田 静子
風光る少女も似合う野球帽     奥村 文子 二階より二階へ会釈リラの風    寺嶋 艶子
雨ながら空の明るし行々子     林  節代 雨青き丹波高原苗代寒       林田 千代
枇杷熟るる唐人町の迷い辻     平田 幸子 バリダンス果てて夜涼の十字星   村田 清子
豆飯の豆のつぶれてゐたりけり   矢田部美幸 山ばうし隔てし人を想ひをり    山添 涼子
潮干狩り地震ありし島沖に見て   山本 清子 聖五月ミサに灯せる絵蝋燭     山本 康夫
ゆるやかな眉描く人の単衣かな   新井比佐代 デパートのうぬぼれ鏡夏帽子    井上嘉津子
卯の花の垣に添いゆく物思ひ    内海 文子 麦秋のどかんと晴れて旅の空    江頭ふみ子
尾道に桟橋いくつ蚊喰鳥      大屋 久子 寺宝なる寝釈迦のあうら緑さす   岡崎 鶴子
パレードの楽隊の上つばくらめ   岡村 美江 遠足の穴居出で入る遠青嶺     奥村木久枝
赤潮の発生ニュース湖五月     金山藤之助 早朝の間違ひ電話梅入かな     川端 久子