『参』作品集より 7


 
教材となす信号機島黄菅      奥村木久枝 甚平着て親の戒名褒めてをり    神原 廣子
青葦に水門上げし船だまり     山添 涼子 紫陽花の千に隠るる車椅子     松田 うた
月あげて植田の水の森うつす    井上嘉津子 花うつぎほつほつ塾の灯りけり   川勝 好女
万緑や先生盾にドッチボール    辻  滋子 レストランに揚羽舞ひこむ牧の昼  寺嶋 艶子
ビール党ワイン党ゐて樹下の餐   林  節代 橋立は涼し床几に智恵の餅     堀 千寿江
モロー展出でて青葉の疎水道    湊  妙子 花栗やしし垣常に丹波道      向井富美子
夕焼けや向ひの屋根の温水器    安井  久 一山の目じるしとして山法師    山本 康夫
ストローに種詰まりたるレモン水  矢田部美幸 支え木の鬼門にありし青実梅    飯島喜代子
水屋蔵見えて輪中に夏日濃し    伊藤 京子 とんぼうの影の離るる石舞台    内海 文子
七月の水ほとばしる奈良井宿    江頭ふみ子 仏頭と夢見て旅の明易き      大屋 久子
氷菓子くわえて少女一輪車     子安 一子 音読のおむすびころりん目借時   曽根 はる
街裏に踏切鳴りて釣忍       金山藤之助 曙の名入りの浴衣五六人      工藤 睦子
前髪を上げてかぶりぬ夏帽子    岡村 美江 磊落な人の来て居る端居かな    奥村 和子