『参』作品集より


 
流れ星フロントガラスを滑りけり  神原 廣子 壬生路地の手摺に零余子成ってをり 林 美智子
神官の狩衣干さる神の留守     矢田部美幸 新涼のこの道がすきパン匂ふ    森  初代
古書市の百円コーナー小鳥くる   奥村木久枝/font> ねむさうな亀石の背のいぼむしり  松田 うた
靴下がさらりと穿けて今朝の秋   谷村 綾子 人の句をそらんじゐたる盗人萩   川勝 好女
露けしや格子戸暗き鰊倉      川端 久子 小用の音聞きてをる秋思かな    鈴木  稔
折紙の手裏剣かはし赤とんぼ    曽根 はる 恐竜の村にひと日や文化の日    高山 邦夫
柳散る瀬田の唐橋しじみ塚     辻  芳郎 図書券を使ふ子のゐて秋深し    寺嶋 艶子
フルートを膝に秋思の少女かな   西田志津子 グラタンに良き焦目生れ文化の日  林 節代
光悦垣にそひてふくらむ萩の風   林田 千代 短か日やどうにも開かぬ瓶の蓋   平田 幸子
故郷に似し山道や木の実落つ    湊  妙子 桐の葉の音の重なる日暮かな    山田 静子
野分して由良の門波の横走り    山本 康夫 霧深し車混み合ふ古戦場      安井  久
耳裏にあはれ蚊ゆるし新書繰る   山添 涼子 黒白の回顧映画や身に入みて    吉村千津子
なんとなく暮れてひとりの茸めし  糸井 光子 綿虫や嫁と紹介されてをり     岡村 美江
券売機のつり銭こぼる文化の日   伊藤 晶子 秋うらら野外喫茶のレモンティ   井上嘉津子