特選
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藤
房をつたひて夕日落ちにけり 芋の葉のくたびれてゐる敗戦日 氷柱に臍など当てて地蔵盆 |
神
原廣子 森 初代 奥村木久枝 |
零
戦の日の丸くづれ草の虫 梨売りを戸口で帰したそがるる |
奥
村和子 山本清子 |
準特選 |
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法
律を学びて帰る十三夜 箱庭に猫の通ひ路などなくて 桟橋に行列できる恵方船 生御魂戸締まりばかり申さるる がらくたに網被せある草いきれ |
大屋久子 小川澄子 菅江玲子 松田うた 矢田部美幸 |
葺
替の瓦
枕に三尺寝 緑陰へスピード違反車検問す 蔓たぐり国旗掲揚するごとく 語気荒きドラマを消しぬ夜の秋 放水の一撃蜂の巣を落す |
岩
田房江 奥村文子 片山寿美子 寺嶋艶子 西田志津子 |
入選 |
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口
中に子育て飴や魂迎へ たこ焼きのひとつ焼け出す初弘法 胎動に腹の歪むや雷遠し 氏神へ脇道詣で葛の花 つばめ来る公設市場月曜日 かにかくに祇園夕ざる秋簾 雁渡し今日は本屋の棚卸 山椒魚日射しに瞼閉ぢゐしや 橋立の空の一点鬼やんま 長良川の濁りをさまり鵜飼船 秋うらら儲け話に二度出会ふ 洗はれて吊されてゐる夏帽子 空車表示もそのひとつ秋灯 秋雲に乗せて勇気を送りたし 図書館の静かに混むや冷房裡 雨月なり言葉みぢかく交しをり 墓薙ぎや蔵より出だす大薬缶 歳晩や文庫本読むホームレス 雑嚢に喉飴も入れ厄日過ぐ |
伊藤晶子 井上嘉津子 岡村美江 奥川正子 奥村文子 川勝好女 川端久子 喜治蓉子 佐々木志う 佐名木京子 清水貴久彦 杉田恭一 鈴木稔 曽根ハル 中貝二呂 林 節代 林美智子 林田千代 板東愛子 |
涼
風や投手交替めまぐるし 月の窓みとせのみなる師の句集 でこぼこと影突つ走る夜店裏 芙蓉咲くこの頃多き機休み 母も出て千草に探す竹とんぼ 立ち枯れの増ゆる岬や土用波 屋敷神の御饌ねらひゐる鼬ゐて はいといふ応へ夫より菊日和 愛鳥日とおもふ森おく神学校 無線局大アンテナの星月夜 秋の蝉メタセコイヤを震はする 銀河より水音とどく岳泊 一斗缶叩きて姥の鳥威し 返信に御の字を消す秋灯下 棕櫚の花我を捨ててより空広し 菊人形檜葉の袴がまづ匂ひ この風も海より来しぞ鯉のぼり 暮れゐても端居の父に声かけず バーベキューして満月を汚しけり |
人
見洋子 平田幸子 平田博子 堀千寿江 前林イトヱ 水野美代子 湊 妙子 身深善子 向井冨美子 森田雅子 山内あや子 山口美栄子 山本康夫 安井 久 吉田うた佳 吉田千津子 和田美奈子 渡辺公子 渡辺真利子 |
佳作 |
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病
棟の名
主といはれ秋立ちぬ 鰯雲登校拒否の孫の居て 地獄から帰りしごとく汗みどろ 三月の山かつきりと前にをり 松茸を見つけて抜いて声立てず 孔子堂の古文講座や萩の風 振り返るたび誰も居ず曼珠沙華 暮早しライトアップの朱雀門 二階より嬰の泣声凌霄花 虫時雨わが耳鳴りに近く住む オカリナの余韻にをはる星祭 あの枝を絵にしてみたい萩の花 遅筆の夜蚊を思ひ切り叩きけり 秋気澄むひとりの朝の深呼吸 満月の未明輝く刻を座す 空どこも同じ色して秋高し |
赤
塚和夫 荒井節子 新井比佐代 飯島喜代子 石倉信乃 石田松代 磯谷好美 糸井光子 大坪みさ越 大橋美寿江 岡崎鶴子 小野正子 河田喜代子 佐藤昭子 島田康枝 庄山章信 |
コスモスや子の靴並ぶ塀の上 遠雷や雲ひたはしる朱雀門 東海道俳句の旅や月涼し 夏座布団配る書院の風筋に 古き本探せば秋の夜の聖書 新走り古九谷に酌む一家言 落雷を近くに犬の落ちつかず 同窓が年重ね合ひ秋の宴 十三夜流人の墓はいと小さき 哭く風を冬涛に聴く宗谷岬 さはやかや宿運なれば共に負ふ 松の露天蓋にして師の碑建つ 秋暑き故の疲れも少しあり 半夏生いつもの窓に猫老ゆる 運河沿ひ煉瓦倉庫に秋しぐれ 虫すだく聞いてゐるなりつつましく |
遠見冨美子 野村映子 橋村静恵 林眞理子 平井泰子 藤井宏泰 松浦恵子 松本恵美子 南 静子 宮川一郎 森千代子 山川宗美 山田節子 山本彰子 吉行よし子 前田重夫 |
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