「参」 X氏に聞く会 第二回 小島 健 選 
            平成九年六月五日 (京都教育文化センター)
   
特選


名水を抱へて戻る雲の峯
手庇の沖より霽るる春田打
あたたかや父の形見の祝婚歌
伊藤晶子
高山邦夫
山本康夫
秀逸

恋の果てよよと文楽春芝居
大リュック仏間に卒業旅行かな
茎立ちや鶏遠出をしてゐたり
初釜や誓子先生正客に
蝌蚪の水大人ばかりで見てをりぬ
歴日や乳首に遊ぶ冬至柚子
甘酒を捜す伊丹の酒どころ
囀や回覧板を果樹園に
木の芽風転勤の荷は少なくて
しげるの忌暮れても白き花こぶし
井上嘉津子
奥村木久枝
奥村文子
河田嘉代子
神原廣子
川勝好女
杉田恭一
佐藤昭子
鈴木稔
平井蓉子
入選

過疎の村片栗咲いて臨時バス
城上の家を年賀のはじめとす
引鶴の翔つ前睦む嘴合せ
春光や道草の子の笛の音
向日葵に歩きそめたる児の一歩
喪の家に満開なりし桃の花
牡丹雪硝子ビルより湧きいづる
受験子の更に背丈ののびにけり
春泥に女子警備員立ち尽す
囀やたくあん山に子の昼餉
初蝶や客の少なき屋形船
自信なき耳に初音の届きけり
蹲踞や日ざしてうごく薄氷
先頭が駆ければ駆けて大花野
塩の壺満たし忘れし花行脚
飛行雲太りふとりて春めける
靴の紐結び直す子風光る
降り込むと婚の日の雪讃へをり
風光る湖にふくるる竹生島
手直しの三日楽しむ雪達磨
苗よりも大き苗札日当たりて
相合ひし漱石と子規春の伊予
雪原を線引く川の黒きかな
春めくやふつて濁らす化粧水

荒井節子
小川澄子
大屋久子
岡村美江
岡本昌子
川端久子
金山藤之助
片山寿美子
子安一子
佐名木京子
菅江玲子
谷口万亀代
寺嶋艶子
西田志津子
林節代
林美智子
橋本孝子
人見洋子
松田うた
松浦恵子
山口美栄子
吉田うた佳
吉村千津子
渡辺真利子