「参」 X氏に聞く会 第五回 中原 道夫 選 
            平成十二年十二月四日 (京都教育文化センター)
   
特選


人の死に村動き出す花の雨
鏡から入れる婚の荷竹の秋
笹鳴きや父と言ふ垣失ひて
奥村和子
渡辺真利子
飯島喜代子
秀逸

失へるものなく立てり枯蓮
噴水のときには天に吸はれけり
冬霧の粒前髪に匂ひ立つ
色変へぬ松にも四方山話あり
大綿や怒濤へつづく千枚田
民宿の閉ざすともなく浦二月
あの勝気今はいづこに日向ぼこ
小面の紐穴にある秋思かな
吸取紙花の便りをうつし取る
いらぬもの捨て押入の寒さかな
磯谷好美
岡本昌子
奥村七重
小野正子
田原きぬ
寺嶋艶子
遠見冨美子
林節代
林真理子
松田うた
入選

秋の空男心と言ふ人も
ピノキオはあとで読もうね豆ごはん
髭面のこれはこれはと雛へ向く
逆縁や陽の当たりゐる吾亦紅
艶種を出し渋りゐる生身魂
人がひと飛ばす雑技や熱帯夜
笑ふほかなし祭凧どかと落ち
花片の爪先立ちに走りけり
蓑虫やいたづら坊主現るる
綿虫の飛ぶ夕景をうべなへり
ハモニカに鉄の匂ひや晩夏光
七人の七つの眼鏡秋の昼
吾が鬼門十一月をつつましむ
アブサンといふ猫大井町春愁
向日葵や駄々つ児の末たのもしき
一通の郵便もなき秋日和
白き掌が闇載せ反す踊かな
地雷なき日本の青き麦を踏む
財布ひらひしことにかかはり日の短か
うすものの筋金入りと云ふ女
さはさはと波の寄りくる新松子
朧夜の寝袋猫に寝取られし
糸吐かぬ病蚕糸吐くしぐさかな
錦木の一節みどり雫せり
海神が人日の日を押し上ぐる
赤塚和夫
新井比佐代
  同
岡村美江
奥村和子
奥村木久枝
神原廣子
喜治蓉子
杉田恭一
鈴木稔
角南とみ子
曾根はる
田中房子
寺嶋艶子
遠見冨美子
坂東愛子
平田博子
宮川一郎
向井冨美子
森初代
森井美知代
矢田部美幸
山本康夫
吉田うた佳
渡辺真利子