「参」 X氏に聞く会 第七回 片山 由美子 選 
平成十五年九月十六日 (京都教育文化センター)

特選
道化師に風船もらふ敗戦日
鬼の目の高さこの辺柊挿す
道場の床に映りし素足かな
岡村美江
奥村文子
塚田正子
秀逸
雲の峰胎の子動きはじめたり
平和宣言聞く扇風機廻る
ほほづきの頬突きあひて姉いもと
まくなぎや役者某の千社札
夕刊を外にてひらく日永かな
虻飛んで太極拳の乱れけり
鶏のうつらうつらと赤のまま
雲の峰ポケット多き旅鞄
絵日記や屋根より高き日輪草
年寄のもてあます午後実梅落つ
伊藤晶子
小川澄子
川端久子
佐名木京子
寺嶋艶子
西田志津子
西村和栄
林 節代
松浦恵子
松田うた
入選
秋出水女優一枚流れゆく
松手入ふはふは雲の通ひだす
炎とは火と火重なる秋刀魚焼く
汗ひかる勝者敗者の区別なく
貫禄のプリマドンナや夏鶯
ふたりゐてひとりの夜の豆ご飯
山あざみ咲きし尾根道雲の中
吾亦紅病名聞かぬこととして
児らの声ころがつてくる夏館
退院の母は黙して門火焚く
十時はや朝顔今日の花ならず
蕨狩り先へ先へと気の動く
汗拭ふ森の匂ひの中にゐて
背泳ぎをして青空に到着す
木刀を抱えて茅輪くぐりけり
古寺に置かれし五色奈良団扇
秋暑し落ちて仰向く写真額
あたらしき艇庫に吊す施餓鬼棚
雲の峰離陸の順を待ちてをり
原爆忌人工芝を洗ひをり
白シャツをはみだす寺山修司かな
ちよんまげの先祖も眠る墓洗ふ
萩咲いて優しき言葉かけたき日
翳りなき空となりけり松手入
売りに出す牛の瞳にある花野かな
新井比佐子
飯島喜代子
石倉信乃
伊藤晶子
井上愛子
井上嘉津子
井上道子
岩本菊江
岡村美江
奥川正子
奥村和子
小野道子
川勝好女
神原廣子
喜治蓉子
木村律子
清水貴久彦
庄山章信
菅江玲子
杉田恭一
曽根ハル
遠見冨美子
橋村静恵
藤本時枝
山本康夫