みのる俳句集 『遊歩』2
七夕の星落ちてゐる通路かな
かなかなや森に水輪の立つごとし
キンキンと架線を鳴らし九月来る
フズリナの星なす石や涼新た
青年の細き顎や貝割菜
実り田の丸みを帯びてきたりける
実柘榴や少年少女蹲り
犬猫ヲ棄テルベカラズ竹の春
とんと昔のきつちよむ噺唐辛子
房を離れてころがりぬマスカツト
そぞろ寒紙で指切るあやまちも
川波に糞る素早さのゆりかもめ
吊革に手が一つづつ寒の雨
浮くことをやめ立ち上がる鴨一羽
二三日病みし臭ひの蒲団かな
厳冬や石斧のごとき比叡山
ポテトチツプスの香り真冬の少女たち
枇杷の花恩師の語る老いのこと
日替わりのランチに蜜柑半顆付く
ポインセチア男ばかりの楽屋かな
抜けし歯を屋根に放りて二日かな
降る雪を見て目休めをしてゐたる
スプーンの凸面にある寒さかな
暖房の静かに花を弱らせて
湿つぽいやうな炭火の臭ひかな