みのる俳句集 『遊歩』3
犬小屋の中まで及び残る雪
残雪を一囓りして狩の犬
猟犬の鼻の尖りや雪解風
渋紙のごとき大地の薄氷
安吾忌や靴の底にて消す煙草
白梅や剛腹の人退職す
競艇の黄のポスターも春めきぬ
春寒を脇挟みして五重の塔
荒蕪地の春の川へと傾けり
廃校の観察池の水温む
春分や虚空に影を投げ地球
野遊びの人描く引き目鉤鼻に
親亀の鳴かず子亀の鳴けるなり
風音が頂上告ぐる芽吹山
双子ゐて一人は眠り花曇
はだかのマハのポーズしてみよ花の下
神木に隣る桜のふぶきけり
地に落ちて一枚の舌チユーリツプ
お国忌のピアス二つも三つも着け
波音のすぐ遠くなる春の湖
春の日を浮かべ白湯スープかな
春蝉を聞き止めてをり風の息
一斉に繋索撓む春の潮
ふじつぼの静かに乾く日永かな
粽食べ語るスコラ哲学など
太陽に翼を描き夏兆す