みのる俳句集 『遊歩』5

空車表示もそのひとつ秋灯
牛の尿客へと及び時代祭10.22
新蕎麦を啜るべしみの顔と顔
花野来て思ひは海のごときかな
継ぎ目より橋の下見えそぞろ寒

青空が鳩光らせて文化の日
杉山は雨に濡れつつ七五三
小六月城ある町に着きにけり
女来て化粧を直す十二月
十二月八日亡き人をちやん付けで

オリオンの胸の三つ星風凪ぎぬ
群れ交叉してゆりかもめゆりかもめ
寒禽の声ありビルを解体す
遠近法収束点に山眠る
時雨降る街に隙間のあるごとく

聖樹置くシヨーウインドウを姿見に
喫煙コーナー紫煙に冬の日差し顕つ
綿虫の飛ぶ夕景をうべなへり
葉牡丹を並べリニユーアルオープンす
網棚に槍投げの槍四日かな

女正月足裏を揉みて靴を履く
時空間断裂させて大嚔
着膨れて湯筒を囲みゐたりける
幾たびも冬の虹見る丹後かな
乗車券に検札の穴冬の旅