みのる俳句集 『遊歩』7

春風や車窓に両手かけて犬
さくらまつりステージ裏を川ながれ
人形が席守る花の宴かな
鶏肉の口をはみ出す桜かな
春燈してトンネルの待避壕

波音を聞きつつ老いて春の犬
朧夜の都市に膨満感ありて
エンタシスなしたる木々や春の鹿
肉塊の蒸れ衰ふる躑躅かな
オフイリヤのごと流れゆく春の水

憲法記念日跳ねつつ乾くブルーギル
黄金週間サツカーゴール倒し置く
初燕宙に天使の輪を描く
春惜しむ水面の皺の伸び伸びて
不詳九座祭れる社島五月

季語の場に立ちてとりわけ青田かな
真夜の海浮き漂へる菖蒲束
勝利投手囲みて帰る青葉風
塩の結晶手摺に刮(こそ)ぐ夏の航
唇に夏潮苦む島への航

桐の花いちにち沖の曇りたる
水流の八衢(やちまた)梅雨の宇治川は
水に膜あり六月の用水路
神の手が摘み零したる夾竹桃
茅の輪青し天空は魔の通ひ道