みのる俳句集 『遊歩』8

海鳴りも夏鶯も足下より
とらつぐみ月の周りがもやもやと
新茶汲みたてまつらんや尉と姥
二人して襁褓を替ふる若葉風
足下の揺るるやヨツト目で追へば

一人買ひて皆買うアイスクリームよ
朱夏の水父の吐血を受けし手に
虹色の油膜の下の海月かな
薄闇の架線の火花我鬼忌かな
海酸漿秘め事めきて子の遊び

蟻地獄石の風化に関はらず
合歓の花珠なして血は零れ落つ
見下ろせり山女の孤影浮く淵を
蛇の衣大物潜みたるこの野
溽暑耐ふ牛の反芻想ひつつ

風を通してジヤングルジムの涼しさう
はつたいを炎のさまに吹き出す子
隻眼の神を隠さふ白日傘
笹の葉の丸まつてゐる炎暑かな
三尺寝水鳥公園駐車場

鉄漿蜻蛉向きを変えては翅を閉づ
箱釣の箱の周りの濡れをらず
水遊び魚道を滑り台として
青嵐津々浦々を巻き込みて
鳥獣虫魚養ひて青嶺かな