參の人々(その2、大屋久子さん)
対岸の櫻見ている花の下
春一番わが家いよいよ地鎮祭
高僧と席同じうす彼岸茶屋
贔屓力士の鬢付け匂ふ春の宵
空濠り深きに草の萌え出づる
寮歌碑に節分の豆十粒程
勲章も遺作もまぶしすみれ草
野鳥園鎖されゐたり囀れり
花茣蓙に窪二つ置き立ち去れり
丸見えのエレベーターに卒業子
指弾して見る名鐘や風薫る
鯛網の神事はじまる浦日和
蒸しタオルに愛馬きよめて卒業す
大佐渡の青嶺まぢかに入港す
尾道に桟橋いくつ蚊喰鳥
佛頭の夢見て旅の明け易き
青葉木菟月あり山の湯に三日
蛍待つ草にしめらす宿の下駄
篝火や仕手の歩みの夕涼し
忌を修し夫の角帽曝しをり
五月雨や一鳥たたず余呉の湖
蝉の穴覗く二人の剣道着
道場の気合や蝉は幹おりる
面一打暑気打ち拂ふその気合
呪ひ釘は昔のことよ貴船菊
成り年の柿に入日の大藁屋
堂裏にモップの乾く十三夜
水鉄砲一番風呂をにごしけり
追憶のふと断たれたりほととぎす
大吉と出し水占や滴れり
どっしりとした貫禄、微動だにしない、物腰のおちついた大物。ある人は女事業家とも言う。ブランドがよくお似合い。
このページは、「丹の会」の合同句集を元とし、掲載句60句から前半30句を紹介しています。