參の人々(その3、中谷路子さん) ![]()
日本の千代紙入れて初便り
バター濃き四日のパンや朝刊紙
家風守る荒神三つ初灯
胎内経を拡げる刷毛や初仕事
恵方向き撥を構える若き膝
悩みごと蹴鞠はじめの空に消ゆ
年玉の首輪に犬の落ちつかず
文楽の酔ひ残る街宵夷
店内に吉祥菓子の彩あふれ
女正月回転寿司に運つまむ
来迎図の補彩ひかえめ筆初
初仕事ゆれさまざまに墨流し
春ショール見残す舞を惜しみつつ
動物パンのどこから囓る子供の日
鶯が梢に鍵盤叩き出す
その上でうたた寝したい春の雲
笛消えて都をどりの景替る
薔薇の門出てより噂つばさ生ゆ
鯉のぼりダイオキシンの風腹に
金泥の筆先おもき花曇
もつれ蝶に追はれ双子の乳母車
春立つや小裂合はせて撥袋
香しみる御物の絵巻春隣
豆雛の調度並べる尼の指
夕立去り水上生活遅き餉に
ゴミ出しも化粧してからおいらん草
西瓜より赤き爪にて種はじく
褒章を胸に青葉の坂下門
先達の侍従すり足夏礼服
運逃げるごと箸すべる冷奴
京都的女性、話し方が美しい。類焼にあわれても悔やみごと一つおっしゃらない。文化財修理(染色)の技術をお持ちになる。
このページは、「丹の会」の合同句集を元とし、掲載句60句から前半30句を紹介しています。