參の人々(その5、林美智子さん)   


初がすみ島の架橋のすすむ音
鷺ひとつ翔ちし畑より春めきて
初午や買ふ煎餅の狐面
懸想文売りの尤もらしき声
飛行雲太りふとりて春めけり
啓蟄やヨーヨーの影巻き上がる
下萌えやがんじがらめの荷をほどく
吾が墓地を求めいくとせ亀鳴けり
ペコちゃんと手をつなぐ童や水温む
日送りや岩に貼りつく海苔乾び
子の髪を子が結ひやりて桃の花
天井をねずみの走る四温かな
美辞麗句すなほに言へぬ万愚節
児を置けばすぐ這うて出る花筵
花かげに袖ひるがへす踊鬼
啓蟄や線路はみ出すおもちゃ箱
春の鹿車夫の辨当見つめ居り
遮断機に生徒かたまる蝶の昼
井戸端の笊に乾きて修二会飯
塩壺のかたまりほぐす四温の日
自転車に花束揺るる卒業期
パン切れに鯉の飛びつく半夏生
梅雨深し窯印あはき山椒壺
子の家に早き目覚めやほととぎす
旅行生雷除けの祈祷受く
深吉野の人無き木場や青


 
何事も控えめ、やさしい気くばりがある。物をしっかり把握しておちがない。
このページは、「丹の会」の合同句集を元とし、掲載句60句から前半30句を紹介しています。