『参』作品集より


 
新涼の鈴鳴らし来る案内びと    松田 うた あれが香具山耳成山と雷ころげ   川勝 好女
国勢調査済みて案山子の男女かな  神原 廣子 縄跳びの縄濡れてゐる草の花    林  節代
土竜除け廻りて釣瓶落としかな   林 美智子 風鈴をしまひてよりの風の木々   平田 幸子
相続の話もありて秋灯       新井比佐代 秋扇たたみ葬の列につく      伊吹ぬい子
切り取ってぽいと地に置く鹿の角  奥村木久枝 新米は水控へ目にとファックスで  片山寿美子
頼まれて通行人役花すすき     曽根 はる 重陽の演能高む潮の入       辻  滋子
今朝秋の遠目が利きし湖の島    寺嶋 艶子 おかげ横町戸毎のぞきて秋日和   林  敏子
放屁虫母の繰り言一喝す      向井富美子 水番の妻が迎へのセドリック    森  初代
抱かれゐて鉾綱引けり在祭     矢田部美幸 柿日和邑は機音あるばかり     山添 涼子
糸吐かぬあはれ秋蚕の流さるる   山本 康夫 原爆忌鳩は旋回くりかへし     山本 清子
ヘンケルの切味たしか青林檎    吉村千津子 さはやかや若き婦警の腹話術    糸井 光子
空缶の黄色も赤も鳥威       佐名木京子 木の実降る宮に普請の始まれり   菅江 玲子
玉入れの終のひとつは秋空へ    伊藤 晶子 秋涼し生徒と並び歩みをり     岡村 美江
命名に屋号一字を新松子      小谷 良枝 男湯に声かけてゐる山の秋     川端 久子