『参』巻頭作家作品3(林節代)

「東欧の旅」8句


マロニエの絮ふきたまる船着場 天井画のヴィナス涼し王女の間
薔薇赤しショパン生家にコンサート 夏燕マリオネットの靴大き
ウィンクのドアマンことに緑さす 馭者の鞭ふれてこぼせりライラック
刺青の挙手や汗噴く水兵帽 ベルリンの壁かけら売る跣の子
「良夜」7句


終バスのひとりとなりし良夜かな 星月夜訪ひ来しひとの髪匂ふ
良夜なり絵巻とび出せ兎どち 月さして厠へ延びし廊きしむ
連弾の指よくはねて小鳥来る 天高し羊ちらばる野の起伏
神の留守身ぶるひを猫大仰に