岩城久治 新句集『冬焉』より (1)
春はあけぼのそもそもは堯舜禹
新句集『冬焉』の巻頭の句。いかにも巻頭にふさわしい一句。この句の眼目は「そもそも」という措辞かもしれません。「春はあけぼの」は、清少納言『枕草子』の第一段冒頭の一節。「堯舜禹」は、中国の伝説の王たち。4000年の歴史の出発点に立つ名君達のこと。大和と漢、この二つの文明圏の、それぞれに華やかな文学と歴史のスタートを結び付けるのが「そもそも」という言葉。この言葉によって、この一句は、広がりを持つとともに立句としての凝縮性を獲得しているように思われます。