岩城久治 新句集『冬焉』より (8)
くろがねの鯉の一打ち水澄めり
俳句に格があるとすれば、この句はまさに格の整った立派な1句と断言できる作だと思う。この句は、茨木和生氏の句会の際、東吉野村の天好園において作られた作品という。天好園の庭にある鯉の生け簀のことなどを思い出しつつ、この作品を鑑賞した。茨木氏は、鯉がお好きとのことで、その点から言えば、同氏に対する挨拶の意味合いも籠もった句である、とも言えると思う。いずれにしろ、凛とした気迫の内在化した1句であると思う。